(全文)敦賀市立看護大学 教育・研究・地域貢献ビジョン ~地域に根差し、ケアを拓く~

教育・研究・地域貢献ビジョン
ビジョン策定の目的
1992年の「看護師等の人材確保の促進に関する法律」制定以降、看護師教育は高度化し、4年制看護大学は全国で急増しました。その一方で教員不足が深刻化し、各大学は学生と教員の確保に奔走しています。こうした中、2014年に敦賀市立看護大学は開学し、地域に根差した教育・研究・社会貢献を進めてきました。2018年には大学院看護学研究科と助産学専攻科を設置し、これまでに488名の卒業生・修了生を輩出。地域医療に寄与する人材を育成してきましたが、他県出身者の割合が高く、卒業後に市外・県外へ就職する傾向が課題となっています。
一方で、少子高齢化や18歳人口の減少により大学運営を取り巻く環境は大きく変化しています。2027年以降は大学進学者数の減少が見込まれ、国は教育研究の質の高度化や大学の再編を進める方針を示しています。こうした状況の中、敦賀市から本学に提示された第3期中期目標(2026~2031年度)では、「選ばれる大学としてあり続ける」「地元入学者の確保」「地域とともに発展する」ことが求められています。
本学はこの期間を「維持・変革期」と位置づけ、教職員が支え合いながら、ケアと信頼の文化を大切にした大学運営を進めます。教育・研究・地域貢献の境界を取り払い、それぞれが相乗効果を生む体制を整え、地域に根ざした次世代看護学の発展を目指します。敦賀だからこそ生まれる新たな看護の価値を育み、地元に誇りを持って貢献できる人材を育てることで、地域に愛され、共に成長する「選ばれる大学」であり続けます。
ビジョン策定の流れ
本ビジョンは、本学の将来計画及び評価委員会(将来計画委員会)が中心となり、教職員の広範な参画と透明性を重視して策定しました。まず、2024年9月13日の将来計画委員会で学長がビジョン検討を提案。翌年2月には「未来を見据え、本学が育成すべき人材像と社会貢献のあり方を考える」をテーマに全学的ブレインストーミングを実施し、教員・職員計34名が参加しました。その後、将来計画委員会でブレスト結果を踏まえた検討を行い、2025年4月には学長を含む看護系教授を中心とした検討ワーキンググループ(WG)を設置。全教職員が自由に参加できる形で本格的な議論を開始しました。4月から5月にかけて「教育」「研究」「地域貢献」「国際交流」をテーマに複数のWGを開催し、教育・研究・地域貢献の境界をできるだけなくし、相乗効果を生む方向性を確認しました。5月15日にビジョン素案を作成し、5月21日から6月4日にかけて学内パブリックコメントを実施。寄せられた意見を踏まえて内容を磨き上げ、7月2日に将来計画委員会で案を確定、7月23日に教育研究審議会で承認されました。最終的に、10月7日の理事会において正式に承認されました。また、策定過程では財務・人事・コンプライアンスなどの運営面についても、大学運営会議で補足的に検討を行いました。
検討から見えてきた強みと課題
教職員による幅広い意見交換を通じて、敦賀市立看護大学の教育・研究・地域貢献における強みと課題が明確になりました。まず強みとして、本学は1学年50名規模の少人数制を活かし、教職員が学生一人ひとりに親身に対応する実践的な教育環境を整えています。学生は「素直・誠実・真面目」で、地域ボランティアにも積極的に参加するなど、地域貢献意欲が高い点が特長です。また、地域には既に病院・自治体・学校などとの連携基盤があり、活動が地域に受け入れられやすい風土が形成されています。さらに、災害、防災、放射線、高齢化など地域特性を活かした教育・研究テーマが豊富であり、多様な視点を持った人材の育成が可能な環境があります。これらのことから、教育・研究・地域貢献を一体的に実践できる構造が整いつつあり、PBL型(課題解決型)学習や実践的な地域活動が根付き始めています。
一方で課題も多く、教員は教育・研究・地域活動の全てを担うため負担が大きく、領域間やセンター間の連携体制が十分とは言えません。教育面では、学生が自ら考え行動する力や挑戦する姿勢を育てる必要があります。。地域連携も単発的・受け身的になりやすく、大学の成果や活動が市民や行政に十分伝わっていない点が課題です。また、国際交流や他大学とのネットワークが弱く、外部資金の獲得にも拡大の余地があります。
これらの強みと課題を踏まえ、教育・研究・地域連携の有機的な融合と更なる体制整備を図る観点から、「教育活動・研究活動・地域貢献活動」の境界(boundary)を外し、相乗効果を!」という方針を導きました。
ビジョン全体の要点
敦賀市立看護大学は、人々から選ばれ続け、地域から求められ続け、そして地域と共に発展し続ける大学であることを目指します。教育・研究・地域貢献のboundaryを外し、相互に連動させた統合的な活動を推進することで、人材育成、研究成果の地域還元、住民の健康増進の全ての成果に好循環を生み出すことが、このビジョンの基本的な考え方です。
【教育】
知識や技術の習得だけでなく、自ら考え、他者と関わり、創造する力を持った看護職を育成する教育を進めます。地元の医療・福祉資源を活かし、「地元創成看護」の考え方を取り入れ、実践力と創造力を高める学びの実現を目指します。学生一人ひとりの個性に応じたオーダーメイドの教育支援を通じ、Well-beingな環境と安全安心なケアの中で、挑戦し、主体的に取り組む経験を重視した「ケアリングエデュケーション」の確立を図ります。また、敦賀で学ぶことを通して、国際的な視点を持ち、多様で柔軟な視野を身に付けます。
【研究】
敦賀市や嶺南地域が抱える今ここにある健康課題に対し、地域住民、医療機関、行政、地元企業などと連携しながら、対象者の生活の質(QOL)向上を目指す実践的研究を推進します。教育活動と地域活動の境界を出来るだけ外し、学生が現場での学びを通じて研究にも関心を持てるよう支援します。小さなこと、地道なことの積み重ねによって「実践に生きる知」として社会に還元されることを目指します。
【地域貢献】
「健康課題は全年代・多様性対応型で広範に、地元巻き込み型の活動で見える成果を」という方針のもと、赤ちゃんから高齢者まで、障がいの有無、国籍、家族状況などの多様性も視野に入れて、あらゆる人にアプローチする地域貢献活動を展開します。学生主体の活動や住民参加型の取り組みを通じて、地域のすべての人の「健やかに生きる力」を支える地域拠点を目指します。
【大学運営・体制整備】
教学IRを活用した教育の質向上、各種ポリシーの適正なマネジメント、内部統制の強化、不正防止、ハラスメントゼロの安心・安全な環境づくりを進めます。また、持続可能で堅実な財務運営とともに、自己収入の確保を積極的にトライしつつ、計画的な設備投資にも取り組みます。
【広報・学生募集】
多角的なアプローチによる大学の魅力発信に努め、入試制度の改善とともに、地域からの信頼と共感を得られる情報発信を展開します。「この大学で学びたい」「この大学があって良かった」と思われる存在となるべく、積極的な広報戦略を進めていきます。

