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2024.12.25 つるが発次世代看護あり方研究会 勉強会

第3回TJN(つるが発次世代看護あり方研究会)勉強会 Report

日 時:2024年12月25日 18:30~20:30
テーマ:「つるがにおける原子力災害に対する体制と住民のpreparedness」
講 師:安田仲宏先生(福井大学附属国際原子力工学研究所教授 本学非常勤講師)
会 場:敦賀市立看護大学 第1会議室
参加者:内布、道重、山崎加、佐々木、池原、新田、井上、伊部、岡本、伊東、鈴木、横山(書記)、野沢、小山、野里、山崎(事務局)、高橋(事務局)、西川(保健管理室)、四方先生、真鍋先生(リモートでの参加)、安田先生、福井大学工学研究科の学生4名
 
【安田先生レクチャー】
 自然科学の立場からの防災の専門家として、「原子力発電の安全技術」、「原子力発電所をかかえるまちの人々の原子力災害への準備性」、「敦賀市が行う住民の意識調査」について、具体的に教えて頂きました。世界の原子力発電や原発事故の状況も知ることが出来ました。
 放射線について正しく知っていること、災害時の原則を日常化して行動化できることが、設置自治体だけでなく、本当は日本中で必要ということを学びました。
 
主な講義内容とそのポイント
原子力発電の安全技術について
 →そもそも福井県は日本で唯一地域の原発がフル稼働している地域である。
 →日本では約50基あり、今後新規に立ち上がるもの、廃炉になるもの両方ある。
  世界的な流れとしては、増える流れになっている。
(ちなみにGoogle、AmazonといったいわゆるGAFAMも独自で原発を保持しようとしている)
 →新規性基準による安全対策の強化が行われており、その費用は1基9000億円から1兆円といわれている。
 →対自然対策:「火災」「地震」「津波」「竜巻」 ※原子炉の冷却:「海水」「電源」
 →重大事故対策:「破損・爆発」「アクセス確保」「放射性物質拡散抑制」「環境確保」等
 →黄砂、PM2.5のように原発の保有の有無でなく、世界中どこにいても影響は受けると考えてよい。
 →その他:使用済み燃料保管対策(国内には廃棄場所がない)

原子力災害への準備性について
 →原発事故は世界のどこかで10年に1度起こっている。
 →住民は屋内退避や避難が必要になった際は市役所から様々な方法で情報を得る。
 →原子力災害は「自助」「共助」ができない災害であるため、情報を人から聞くしかない。
 →放射線防護の3原則(①距離をとる②遮へいをする③時間を短くする)を知る。
 →被ばくや汚染を防ぐためには「できるだけよけいな被ばくをしないようにする」
 →内部被ばくに関しては「安定ヨウ素剤」を使用する。(敦賀市民の1割程度しか持っていない)
 →行政、避難先などと防護行動を実現するための連携をとる。

敦賀市が行う住民の意識調査結果
 →2022年に安田先生が敦賀市と協同して住民意識調査を行った(敦賀市民約400人の回答があった)。
 →原子力災害に関しての関心が低下している。
 →屋内退避のイメージができていない住民が多くいた。
 →広域避難について具体的なイメージを持っていない住民が多くいた。
 →年代別のアプローチの必要性が明らかになった。
 
【質疑応答】
・廃炉に関しての避難方法について
・学校での教育について
 →原発を持っている自治体はマイナーとされており、対策を打つところはエリアを限っている。そもそも国がエリア別で対策を打つように進めている。
 →がん対策のように全国民の関心事ではないためとも思われる。
・安定ヨウ素剤について
 →敦賀市では妊婦と子供に配布しているが、もらう住民は1割以下である。
 →妊婦健診などでわざわざ配布することはしていない。
 →指定されている(処方箋対応の)市内の薬局ではもらえるようになっている。
 →住民への周知等について今後も継続して考えていく必要がある。
・原子力の事故が実際にあった場合の観光客、電車利用者への対応について
・その他
 →災害時に避難所に原発関連の情報を伝えるミッションが原子力の専門家にはあったが、誰も避難先の人は聞いてくれなかった。その後、医師および看護師(特に看護師)と共に行くと、看護師の傾聴が効果的であり、住民は話を聴いてくれた。災害時に多職種と連携することは重要である
 
【研究会より】
 つるが発次世代看護研究会では、地元「つるが」をより深く理解するために勉強会を開催し、看護大学が地元創成看護として取り組む優先度の高い課題を模索しています。安田先生の話によると、原子力災害に対して比較的意識の高い自治体とのことです。原子力災害へ医療看護の対応のモデルには必ず多職種連携を織り込んで、本学にしかできない対応枠組みを開発することができるかもしれません。
 
【次回】
第4回勉強会は決定次第、関係各位にアナウンスいたします。
 
【参考資料】
原子力防災に関する住民意識調査報告書2014(PDF)
 
【関連文献】
日本原子力事故・災害医学会学会誌 
安田 仲宏 原子力防災における福井・敦賀モデル ― 行政と大学と住民の協働
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