タイトル
研究チーム
所属 | 職 | 氏 名 |
敦賀市立看護大学 | 講師 | |
福井大学子どものこころの発達研究センター | 准教授 | 鈴木太 |
医療法人壱燈会なんばながたメンタルクリニック | 院長 | 永田利彦 |
Oregon Health & Science University | Associate Professor | Alan R. Teo |
福井大学子どものこころの発達研究センター | 助教 | 牧野拓也 |
大阪大学人間科学研究科 | 非常勤講師 | 井出草平 |
福井大学学術研究院医学系部門 | 教授 | 小坂浩隆 |
概要
研究成果の概要
新型コロナウイルス感染症COVID-19の世界的大流行に伴って,本邦ではCOVID-19感染者に対する差別や自殺者が出ており、大きな問題となっている.COVID-19感染者や死亡者数の増加、医療体制の不足、メディアの報道などが感情的な反応を強く呼び起こし、不安や強迫観念につながっている.
Coronavirus Anxiety Scale (CAS)およびObsession with COVID-19 Scale (OCS)はCOVID-19に関連した不安や強迫観念による機能不全に陥っている可能性が高い症例を特定するために最初に開発されたスケールであり,CASは26ヵ国語に,OCSは21ヵ国語に翻訳されている. 我々は原著者より邦訳の許可を得て,日本語版を作成し,表面的妥当性を確認した.
本研究では,以下の2点を目的とし,検証を行った.
①Coronavirus Anxiety Scale日本語版(CAS-J)の信頼性と妥当性の検討
②Obsession with COVID-19 Scale 日本語版(OCS-J)の信頼性と妥当性の検討
本学の学生を含む成人を対象にオンライン調査を行い,293名より回答が得られた.
結果は CAS-JとOCS-Jの内的一貫性,試験再試験信頼性が示され,CAS-Jと不安症状の測定尺度であるOASIS,OCS-Jと強迫症状の測定尺度であるOCI-Rとの間に正の相関が認められ,Heterotrait-Monotrait Ratio of Correlations(HTMT)比による各尺度の弁別的妥当性が示された.確証的因子分析の結果,CAS-JとOCS-Jはともに1因子構造であり,多母集団分析より測定不変性をもつことが確認された.よってCAS-J,OCS-Jが十分な信頼性,妥当性を有することを本研究で明らかにし1本の論文で公表した.
研究成果の学術的意義や社会的意義
本研究により,本邦でもCOVID-19パンデミック後に生じた強迫観念や不安症状の調査研究が可能となり,支援を要する人を発見しやすくなると考える.COVID-19の再流行が起こった際にも活用でき,また質問紙の特性から異なる病原体の流行が起こった際にも活用できることが期待される.